シリーズ:インドネシアの昔話を求めて

約30年前、私は「インドネシアの民話を、現地で"生の声"として聞いてみたい」と願うようになりました。けれど当時は、観光客もほとんどいない地域の情報は少なく、宿も乗り物も地図も、何もかもが手探りです。閉鎖的な村に、よそ者の私が一人で入っていっても、心を開いてもらえるはずがない——そう思い、まだ小学生だった息子と娘を連れて旅に出ました。

バリ島から東へ、スンバワ島、モヨ島、ティモール島、そしてサブ島へ。古い双発プロペラ機はエンジン音が鳴るたびに不安をあおり、崖道のバスは人と荷物でいっぱい。宿のない町では、民家の一室を借りて眠ることもありました。

怖い。疲れる。心細い。けれど、そのたびに差し出される手や笑顔があり、私たちは救われていきました。

それでも、民話は簡単には聞けません。
「一年目はよそ者、二年目は知り合い、三年目で友達」
そう言われた通り、言葉も文化も違う土地で、信頼は時間をかけて育つもの。私は“民話の旅”を、焦らず続けることにしました。

こうして始まった旅が、のちに私の人生を変える長い時間へとつながっていきます。

インドネシア周り島の地図